【聖蹟桜ヶ丘】レモン薫る夏、18歳の私は萌と七海と一つになった(明日香)

その夏、私の心は複雑な感情で満ちていた。18歳の女子高生にとって、この夏は人生を大きく変える経験になった。
セーラー服のスカートを翻し、自転車を立ち漕ぎして萌の家に急ぐ。足を踏み入れると、いつものレモンのルームフレグランスが鼻腔をくすぐった。窓から差し込む夕陽が壁を赤く染め、遠くで蝉の鳴き声が聞こえる。心臓が高鳴り、手のひらに汗がにじむ。
萌は私のガールフレンド。夏の陽光のように明るく輝く笑顔が魅力的な女の子で、いつも栗色のくせ毛を風になびかせていた。やはり茶色がかかった瞳は神秘的で、華奢な体つきながら、芯の強さを感じさせる。優しさと情熱を秘めた彼女の存在は、私の心を虜にした。
そしてなぜか、萌の家にはいつも彼女のクラスメートの七海がいた。私は女子校で、二人は共学だから詳しい素性は知らない。ただ、萌はどうしていつも七海を呼ぶのか? 複雑な感情を抱くというよりは好奇心が勝った。なぜなら、七海は豊かな胸と大きな瞳が印象的な女の子だったから。物静かだけど成熟したルックスが、その穏やかな微笑みのなかにたぎるような情熱を秘めている…一言でいうと、萌とは対極のとびきり魅力的な女の子だった。
ある蒸し暑い午後、萌の部屋でくつろいでいた時のこと。扇風機の風が私たちの肌を優しく撫でる。私はふざけながら二人の間に割って座り、そっと萌の手を握った。この程度のボディタッチはいつものことだったけれど、なぜかその日は彼女の柔らかな肌に触れると、全身に電流が走るような感覚があった。
「ねえ、キスしてもいい?」と私が囁くと、萌は目を閉じてうなずいた。唇が触れ合うと、レモンの爽やかな香りが鼻をくすぐった。初めて七海の前でキスしたことで、私の心は高鳴った。
横目で見ると、七海は黙って私たちを見ていた。彼女の瞳に、羨望の色が浮かんでいるようにも感じた。そしてこれが複雑な関係の始まりだった。
数日後、七海と二人きりになる機会があった。お気に入りのアイスクリームを買いに行った萌は、あと30分は戻らないだろう。彼女の大きな瞳に吸い込まれそうになりながら、私は勇気を出して尋ねた。
「七海、私とキスしてみたい?」
少し躊躇したが、彼女はゆっくりと頷いた。
「明日香ちゃんとなら…」
七海とのキスは、萌とは全然違っていた。もっと情熱的で、大人びていて、初めて舌を吸われながら、私の心は混乱し始めていた。私は二人を同時に好きになることができるんだろうか? それとも、これって夢?
夏が深まるにつれ、私たち三人の関係は複雑になっていった。あいかわらず萌の部屋に入り浸っていたけれど、なぜか萌が家を空ける時間が増えた。それにつれて、七海とキスしたり、体に触れたりする機会も増え……好奇心と欲望が入り混じり、私は七海との時間がかけがえのないものになり始めていた。
ある夕暮れ時、いつものように三人並んでベッドに腰掛けていた時のことだった。柔らかな光が部屋を包み、甘い緊張感が漂っていた。ベッドがキシキシと軋む音が静寂を破る。
「今日は特別だよ」
萌がささやいた。彼女の声は少し震えていた。
えっ、どういうこと?
七海がうなずく。
二人に挟まれた私は、ドキドキした。
萌に続いて、七海も私のショートパンツに手をかける。
期待と不安が入り混じる感情に、頭がクラクラした。
「大丈夫」
七海が優しく言った。
「私たちを信じて」
萌が私の背中をそっと撫でる。その温もりに、少しずつ緊張がほぐれていく。
私は二人の温もりに身を委ねた。優しいタッチで愛撫されながら、今まで感じたことのない快感が全身を駆け巡る。三人でする幸福感と罪悪感が交錯する。
私もなんとか二人に悦んでもらおうとする。
萌の小さな胸を舌先でくすぐりながら、七海の豊満な胸を揉みしだく。萌の肌は生クリームのように白く、触れると少し冷たかった。対照的に、七海の肌はミルクチョコレート色で、ほんのり温かかった。二人の体の違いを楽しみながら、私は夢中で愛した。
「あぁ…」萌が甘い声を漏らす。彼女の体が小刻みに震える。
「もっと…」七海が私の頭を押さえる。彼女の指が私の髪に絡む。
半裸の三人で輪になり、愛液の香りと味に酔いしれながら、舐め合い舐め続ける。塩味がかった汗の味と、甘酸っぱい愛液の味が混ざり合う。やがて萌が大きく身体を反らし、七海も激しく腰を揺すり、まもなく私も果てた。
「すごい…」
二人とも息を切らし、頬を紅潮させていた。私は言葉で表現できないほどの喜びを感じた。
その後、私たちは何度も秘密の逢瀬を重ねた。あるときは市民プールでじゃれあっている風を装いながら。また、あるときは夏の夕暮れ時の公園で柔らかな芝生に横たわり、汗ばんだ肌を重ねたこともあった。そして毎回、新しい発見と興奮があった。
でも、夏の終わりが近づくにつれて変化が訪れた。二学期が始まり、3人で会う機会が減っていった。木々の葉が色づき始め、風に乗って切ない気分が漂う。
木枯らしが吹き始めた日、萌と七海に呼び出された。
「私たち、明日香のこと大好きだった」
萌の目には涙が光っていた。
「でも、もう…ごめんね」
七海の言葉に、私の胸は張り裂けそうになった。
手をつないだ二人が遠ざかっていく。
どこかで気付いていた。
愛し合っていたのは萌と七海。邪魔者は私だったことに。
夏は永遠ではない。
今でもときどき、あの頃の夢を見る。
萌と七海、対照的に艶めかしい姿が、夏のまばゆい光の中で躍動し、輝いている。胸が高鳴った瞬間、どこからともなくレモンの残り香が鼻をかすめ、私を現実へと引き戻すのだ。